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スライム



・場所:森 (クリックで画像表示)

・必要なイラスト数:3枚
  1.必死な表情で這いつくばって逃げようとしているシーン。 イメージ画像表示
  2.ダメージを食らって痛みに顔をゆがめているところ。 イメージ画像表示
  3.スライムに取り込まれたシーン。 イメージ画像表示



 ★ シーンイラスト2から開始


【アーシャ】
「ぎゃああああああああああああああ!!」


肉が焼ける音と臭気が辺りに立ち込める。


アーシャは焼け崩れる自分の右肩の、
そこにべったりとへばりつくスライムを
手で振り払おうとする。


スライムに触れた手袋が一瞬の内に溶けて
アーシャの手のひらに直に触れる。


【アーシャ】
「っ!? ぐうううう……っ!…………」


【アーシャ】
「! くっ……」


熱した鉄板に挟まれたような
激痛が走るが、
どうにか耐えて振り払う。


 ★ シーンイラスト1に切り替え


アーシャは溶けて朽ちた剣を捨て、
肘を擦り、地を這った。


魔力が尽き、体力が尽きた今、
アーシャに残された手段は一つ。


――逃げること。


スライムに俊敏さは無い。
匍匐で進むアーシャの速度に
付いてくる様子は無かった。


必死に這って逃げていると、
存外すぐに背後からの物音が消え、
気配が消えた。


アーシャは生い茂る雑草の中に潜み、
頭を下げて倒れ伏し、
荒い呼気を沈めようと静かに呼吸する。


逃げおおせたかに見えたが――


【アーシャ】
「!?」


風が舞って、
酸い、強烈な臭気が鼻をついた。


【アーシャ】
「う…………ぐっ!……」


アーシャは再び肘を擦り、地を這った。


とにかく離れようと、
スライムの縄張りを抜けようとする。


力を込めて肘を動かし、
酸素を取り込もうと
大きく息を吸った。


その、次の瞬間。


ドスンッ――


顔の前に酸の塊が落ちてきた。
目に染みるほどの臭気を噴き出す。


 ★ シーンイラスト2に切り替え


【アーシャ】
「ッッ! ぐ……! 
 が、うあ…………げほっ、
 …………ぅえっ……!!…………」


喉が焼ける。
まるで火の玉を飲み込んだように。


【アーシャ】
「げほ! え、ぅえええぇぇッ!
 が、げッ、おえ……げ……っ」


アーシャは肘を動かすのを止め、
喉元を掻きむしり始める。


必死に、喉に絡む火の玉を
吐き出そうとするが、


酸の粒子はアーシャの喉奥を
掴んで離さず、焼き尽くす。


酸の塊の上にスライムが
ドロリと落ちてくる。


ぬるりと伸びて、
アーシャの手の甲に触れる。


ジュウウウウウウっ――


【アーシャ】
「あっ……!?
 ぎ――ああああああああああ!!」


肉の焼ける音がして、遅れて激痛が来る。
触れられた手の甲から煙が上がる。


あまりの痛みに神経が焼きつき、
筋肉が痙攣して脳の命令を受け付けない。


アーシャは足をバタバタと動かしてもがく。
腕を引っ張ろうとするが、皮膚が
千切れてしまいそうな感触があって躊躇う。


どうすることもできず、
痛みを受け入れ続けて、
アーシャの顔が大量の涙と鼻汁に塗れる。


そして。
地面でのたうっている間に
先のスライムが追いつく。


バタバタと暴れる足に、
そっと、寄り添うように吸い付く。


――ジュ、ジュッジュッ、ジュウウウウ。


【アーシャ】
「ッッ?! あ、ぎ、ぃ――――
 っ――――ッ、ぁっ、ぉ……!」


激痛に身が引きつり、悲鳴がくすぶる。
アーシャの右の足首に重点的に絡み付き、
ブーツを溶かし、アキレス腱を焼き潰す。


【アーシャ】
「づ……!
 ぅ…………そ……!?……」


アーシャは大粒の涙をこぼす目をひん剥き、
自分の足に添うスライムを見た。


知能が無いに等しいスライムが
明らかに獲物の逃亡手段を狙って奪った。


信じられないことである。
ただのスライムではないと
予感させるには十分だった。


足を殺され、
手段のことごとくが露と消える。


【アーシャ】
「っ…………これしか――――!」


アーシャは奥歯を噛み締めると、
魔力の器の底にある
開かずのフタを引っ張り上げた。


ボウッ――


アーシャの髪から、指先から、
炎が溢れる。


まさしく命を燃やす。
魔力の種、源を放つ。


このまま焼き殺されるよりはと、
最後の抵抗を試みる。


【アーシャ】
「……消し飛べぇぇぇぇえええ!!」


 ★ 効果音:魔力ためる
 ★ 赤みを帯びたホワイトアウト


アーシャが最後の力で声高に叫ぶと、
その体からまばゆい閃光が溢れ出した。


周囲の木々を膨大な熱量が覆う。
自然発火を起こして燃え上がる。


【アーシャ】
「ああああああああああああああああ
 ああああああああああ!!!!!!」


アーシャは、体の内側から別の何者かが
肉体を割って出てくるかのような、
鮮烈な痛みを味わう。


【アーシャ】
「ッ……
 う、あああああああああッッ!!」


魔力を塞き止めて溜め込み、
一際、叫び上げる。


 ★ エフェクト:効果音と振動


ドォォォォォ――!!


暴走する魔力が自身を火達磨にする。
火は渦を巻き、
辺りをスライムもろとも焼き尽くす。


舞い上がる熱が大気を引き裂く。
爪痕のような隙間に風が吸い込まれて
雲が集まり、雨となって降り出す。


 ★ ホワイトアウトを解除しつつ、流れでそのまま暗転


雨に、アーシャは火を収めると
丸い黒焦げのベッドの上にうつ伏せに、
ドッと倒れ込んだ。


酸い臭いはしない。敵は倒れた。


【アーシャ】
「………………――――――」


針で毛穴をえぐられるような痛みを
全身に満遍なく味わいつつも、
難敵の撃退に安堵する。


そぼふる雨が周囲の木々に点る火を
洗い流して、焼け広がるのを防ぎ、
地面に染み込んでゆく。


アーシャは痛みの引いてきた体を
ひっくり返して、雨を前面で受ける。


しばらくそうして、
熱も痛みも引いて来た頃合を見て
静かに体を起こす。


スライムに足を焼かれたため
立ち上がることができず途方に暮れる。


それでも命が助かったことに満足して、
左足と両手を使って移動を始める。


にゅるっ。


【アーシャ】
「?!」


持ち上げて、下ろした指先が、
粘ついた何かに触れる。


土気の隙間から覗くそれを見て、
アーシャの顔面から血の気が引く。


【アーシャ】
「――――――…………」


枯れた喉は鳴らず、
声無き悲鳴を上げる。


地面にペタンと落ちたアーシャの尻を
粘着質の液体が包み、持ち上げる。


 ★ シーンイラスト3に切り替え


雨を吸い、炭を栄養とし、
真黒な一個の巨大化したスライムが
地面を山と盛り上げて姿を現す。


ぽっかりと口を開けて舌を動かし、
アーシャを体内へ、ぽいっと放り込む。


体力も魔力も根こそぎ失い、すべは無い。
動かぬ体に圧がかかり、
骨と身が軋んだ音を立てる。


スライムは縦横に伸び縮み、
アーシャの体をもてあそぶ。


……………………ごぼ…………


アーシャは朦朧とする意識と暗闇の中、
死が訪れるまでの時間を、
この世への別れを惜しむのに費やした。


スライムの、全身を使った咀嚼は
アーシャの姿が溶けて肉片となっても続いた。