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〜第3話〜

流れ着く場所



ジーナの家


<ジーナ>
なるほどのう。森の奥へ行くのは危険じゃから
とりあえず話だけ聞いてから帰ろうというわけじゃな。
<アーシャ>
はい。
<ジーナ>
村の子供になら、エルデバーム様の神秘的な物語でも
聞かせてやるんじゃが、あんたにゃあ、現実的な話を
した方がいいじゃろうなあ。
<アーシャ>
はい、お願いします。
<ジーナ>
エルデバームは、この森では神のように
崇められている存在じゃが、森の生態系を管理するために
古代に創られたものなのだそうな。
<ジーナ>
森に広く張り巡らされた根は、土の状態や魔力の流れを捉え
地下深く伸びる根で吸い上げた水や、本体内で生成した
エネルギーをバランス良く散布しているんじゃ。
<ジーナ>
もちろん、この管理機能にも限界はある。
最近のように極端に雨が降らなかったりすると
さすがに手が回らなくなるようなんじゃ。
<ジーナ>
今回の魔物騒ぎも、普段森の奥にしかいない魔物が
食物が不足して、ここいらに出没するように
なったんじゃろう。まあ、そのうち収まるさね。
<アーシャ>
確かに、最近の雨の少なさにしては
草木が青々と元気よく茂ってますよね。
<ジーナ>
また、そういった生態系を管理する機能の他に
エルデバームには自分の意思を持ち、
人と会話をすることもできるのじゃよ。
<アーシャ>
意志、ですか・・・
<ジーナ>
直接、声を出して会話をするわけではないんじゃが
自分の思っていることをテレパシーのように相手に
伝えることができるんじゃよ。
<ジーナ>
もっとも、子供のように感受性の高い者や、ある程度の
魔力を持った者でないと、感じ取ることはできんがのう。
<ジーナ>
自然に対してだけでなく、人に対しても接することができ
時にはやさしく話しかけ、時には厳しく叱る。
そんなところが長い間皆に信仰されておる理由じゃな。
<アーシャ>
なるほどー、すごいですねえ。
機会があったら、ぜひ一度お話してみたいです。
<ジーナ>
そうじゃ、家の裏の洞窟にとっておきの場所があってのう。
森に漂う残留思念の吹き溜まりとなっている場所なんじゃが
そこならエルデバームの意志を感じ取れるやもしれん。
<ジーナ>
といっても残留思念を感じ取るだけじゃから
過去の会話の様子がなんとなく頭をよぎるような感覚を
得られるだけじゃがのう。
<アーシャ>
面白そうですね。ぜひ、そこに行ってみたいです。
<ジーナ>
じゃあ、ちょっとついてくるがよい。


洞窟の中


<アーシャ>
わー、けっこう広くて深いんだなあ。
<ジーナの声>
あー、あー
おーい、私の声は聞こえとるかい?
<アーシャ>
はい、聞こえます。すごいですね。
こんな洞窟の奥と外とで会話できるなんて。
<ジーナの声>
その赤い水晶の立っている付近だったら
声が届くからのう。安心して進むがええ。
<ジーナの声>
といっても、一本道じゃし、魔物もコウモリくらいしか
おらんから大丈夫じゃがな。
<ジーナの声>
残留思念が感じ取りやすいよう、入り口は閉じてあるが
何かあったら言っておくれよ。
それじゃ、先ほど話した奥にある小さな部屋まで・・・
<アーシャ>
あれ? なんかコウモリ以外にもいろいろ魔物が
いるみたいなんですけど。
<ジーナの声>
なんじゃと? そんなはずはな
な なぃ は ・・・ ズ ・・・ジャガ・・・
<アーシャ>
え? ちょっと、ジーナさん?
ジーナさ〜ん、聞こえますか〜?
<水晶>
・・・・
<アーシャ>
う〜ん・・・
けっこう奥まで来ちゃったことだし
とりあえず進もうかな。

洞窟を奥へと進んだ

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