第9話 その2




城下町


<アーシャ>
(主要な組織への連絡は済んだし、
 次は避難のお手伝いだね。)
<アーシャ>
エリー、避難の方は順調?
<エリーシア>
ええ、あと半日もあれば
ほとんどの国民を避難させられるわ。
<エリーシア>
国境への結界も張り終えたし、
万が一国内に攻め込まれるとしても、それまでには
十分避難を完了させられるわ。
<アーシャ>
それは良かった。じゃあ、私はとりあえずギルドの方で
待機してるけど、何か手伝って欲しいことがあったら言ってね。
人手が足りなかったら、ギルドのマスターに頼んでみるし。
<エリーシア>
ええ、ありがとう。そのときは、よろしくお願いするわ。





<ダグラス>
レオン、今回の宣戦布告、どう思う?
<レオン>
以前、ザルガスカの視察に行ったときの状況から判断すると
ザルガスカの兵力は、我々アレスティアの兵力には
到底及びません。ザルガスカもそれはわかっているはずです。
<レオン>
それに、ザルガスカの経済状況をみても、他国を侵略してまで
資金や食料その他を得なければならないような
切羽詰った状況とは思えません。
<レオン>
宣戦布告の口実も
こじつけにしか思えないものが多々あります。
<ダグラス>
こじつけでも、勝利してしまえば、どうとでもなるだろうからな・・・
やはり、何か勝算があってのこと ということか・・・
<レオン>
砦のすぐ近くで待機しているザルガスカの兵ですが
あれくらいの数なら、今、砦にいる者達だけでも
対応可能だとは思いますが・・・
<ダグラス>
相手の目的がわからない以上、こちらも待機しておくとしよう。
少なくとも、我が軍の準備が十分に整うまではな。


ギルド


<アーシャ>
マスター、どう思います?
<マスター>
やはり、兵力を補う策か何かを隠してそうですねえ。
<アーシャ>
そうですかあ。
<マスター>
兵力を補う方法として、1つ気になることがあるのですが・・・
<アーシャ>
なんでしょう?
<マスター>
先日、アーシャさんに調査していただいたネクロマンサーの件、
下水道で魔物たちを操っていたのは、あそこで死亡していた
老人ではない、別の誰かである可能性が高いんです。
<アーシャ>
えっ、そうなんですか?
<マスター>
ええ、術者の死後も傀儡の術が継続していたというのは
術の性質上、考えにくいそうなんです。
<マスター>
そして、もし、その術を使えるものが
ザルガスカ側にいるとなると・・・
<ゼライド>
あねさ〜ん、大変で〜す!
<ゼライド>
中央街道に大量の魔物が!
<アーシャ>
なんですって!?


城下町


<アーシャ>
エリー、ちょっと話があるんだけど・・・
<エリーシア>
アーシャ、こんなときに魔物の大量発生だなんて
いったい、どうなってるの? しかも、中央街道だけじゃなく、
他の主要な交通路にも現れだしたっていうじゃない。
<アーシャ>
うん、それについての話なんだけど・・・



<エリーシア>
魔物を操る術なんかがあるなんて・・・
しかも、その術者が何人か国内に潜伏している
可能性があるなんて・・・
<アーシャ>
術の性質上、それほど長距離から施せるような
術じゃないんだって。
<アーシャ>
ギルドの人たち総出で、避難者の護衛に当たってもらってるけど
術者を倒さないことには、きりがないから、
魔法研究所の人たちに、魔力の流れをたぐってもらおうかと…
<クリス>
それは難しいわね。
<アーシャ>
あ、クリス、丁度いいところへ…
<クリス>
魔法研究所の人員のほとんどは国境の結界の維持で手一杯。
魔力の出所を正確に調べるとなると、よほどの実力者か
ある程度の人数を集めないことには、役に立たないわ。
<アーシャ>
う〜ん、そっかあ〜、それは困ったなあ。どうしようか・・・
<アーシャ>
あ、そうだ!
クリス、ちょっと来てもらえる?
<クリス>
え、あ、ちょっと、アーシャ、ひっぱらないでよ、
って、いったいどこに連れて行くつもりよ。
<アーシャ>
エリーは国民の避難と護衛に専念してて!
術者退治は私達でなんとかするからー
<エリーシア>
了解、気をつけてね。

ザルガスカ帝国


<魔導師>
そろそろ魔物どもがアレスティアで暴れ始めた頃ですぞ。
きっと慌てふためいていることでしょう。
<鎧の男>
そうか・・・
<鎧の男>
国境の結界がなくなったら、直ぐに攻め入る。
総員、戦闘準備を完了しておけ。





<ダグラス>
何!、 魔物が!?
<ダグラス>
これがやつらの狙いか・・・
しかし、この場を離れるわけにもいかんし・・・
<レオン>
街にいる者達のがんばりを信じましょう。
今はもう、自警団といがみ合っていた頃とは違います。
<ダグラス>
うむ、そうか、お主がそういうのなら・・・
では念のため、街へ兵を戻す場合に
誰が戻るかだけでも決めておくとしよう。


その頃、アーシャとクリスは・・・


<クリス>
ちょっと、アーシャ、いい加減、放してってば。
って、こっちにあるのって、もしかして・・・
<アーシャ>
呪術や暗黒魔法の研究所、通称、デュンケルハイト。
<クリス>
ちょっと、なんでこんないかがわしいところに
来なきゃいけないのよ。
<女性の声>
いかがわしいとは心外ですわ。
<アーシャ>
あ、ヴァネッサさん、こんにちは。
<ヴァネッサ>
これはこれは、アーシャさん、今日はどういったご用件で…
<アーシャ>
ちょっと頼みたいことがありまして、
<ヴァネッサ>
そうですか。
立ち話もなんですから、どうぞ中へ。
<クリス>
ちょっと、嫌よ私は、こんなところに入るなんて…
<アーシャ>
まあまあ、クリス、とって食われやしないからさ。
<クリス>
ちょっと、アーシャ、はなしなさいよー・・・


庭園


<ヴァネッサ>
なるほど、術者の居場所の特定ですか。
確かに、私どもの力を持ってすれば可能でしょう。
<アーシャ>
それじゃあ、よろしくお願いします。
<ヴァネッサ>
では、100万Gほど用意していただければ・・・
<クリス>
ちょっと、なによその大金!
王国の危機なのよ、そんなこと言ってるじゃないでしょ!
<ヴァネッサ>
我々デュンケルハイトは、研究している術の内容からか
皆様に忌み嫌われていまして、スポンサーもおりませんので
火の車なのですよ・・・
<クリス>
うそおっしゃい!
どうせあくどいことして、いろいろ稼いでるんでしょ?
暗殺を請け負ったりもするって噂じゃない。
<アーシャ>
まあまあ、クリス、抑えて抑えて。
あくまで噂だから・・・
<アーシャ>
でも、さすがに、その料金は払えないですよ〜。
どうにかなりませんかねえ。
<ヴァネッサ>
他ならぬ、アーシャさんの頼みとあっても
こればっかりは・・・
<アーシャ>
それじゃあ、王国図書館の閲覧許可を出すとしたら
どうでしょうか?
<ヴァネッサ>
あら!? そんなものを本当に出していただけるんですか?
<クリス>
ちょっと、アーシャ、何言ってるよ!
そんな許可、出るわけないでしょ!!
<アーシャ>
クリスの権限でどうにかなるでしょ。
<クリス>
そりゃあ、そうだけど、なんでこんなやつらに・・・
私にも立場ってものが・・・
<アーシャ>
王国の危機に、そんなこと言ってる場合じゃないんでしょ?
それとも、他に何かあてがあるの?
<クリス>
あーもー、わかったわよ。許可を出せばいいんでしょ、全く。
この戦争が無事に終了したら、出してあげるわよ。
<ヴァネッサ>
本当ですね、約束ですよ。
もし、約束を破ったら・・・呪い殺しちゃいますよ。
うふふふふ・・・・
<クリス>
ちょっと、なんか物騒なこと言ってるんだけど・・・
<アーシャ>
あはは、単なる冗談だって。
・・・
たぶん・・・


自警団の集会所


<アーシャ>
というわけで、術者がいると思われる場所は
地図に示した通りです。探さなければならない範囲が
少し広いかもしれませんが、どうかよろしくお願いします。
<デュレスタ>
こんだけ限定されてれば十分だ。
この範囲内で身を潜められそうな場所くらい検討がつくさ。
俺らは、この1から3のところを担当させてもらうぜ。
<デュレスタ>
野郎ども! 騎士団への借りを利子つけて一気に返すチャンスだ!
気合入れていくぞ、ごらぁ!!
<アーシャ>
私は騎士団への連絡も兼ねて、中央広場を経由して
4番の中央街道のところへ向かおうと思います。
<アーシャ>
マスター、ここらへんの人を何人か連れてってもいいですか?
<マスター>
ええ、どうぞどうぞ。
それじゃあ、残りを他のギルドのメンバーと自警団とで
適当に分担させていただきますよ。
<アーシャ>
はい、よろしくお願いします。


城下町


<アーシャ>
というわけで、魔物の方はどうにかなりそうだから。
<エリーシア>
了解。それなら砦の方から人手を割いてもらわなくても
大丈夫そうね。
<アーシャ>
それじゃ、私は中央街道の方に向かうから。
<エリーシア>
ええ、気をつけて。


中央街道の近く


<ルーファス>
大丈夫ですか? 今すぐ止血しますから、
ちょっと痛いかもしれませんけど、我慢してくださいね。
<ルーファス>
よいしょっと。
はい、これで大丈夫です。
あとは、腕を心臓より高い位置にしておくと効果的ですよ。
<ルーファス>
あ、そちらの方はまず消毒が先ですね。
消毒液を持ってくるんでちょっと待っててくださいね。



<アーシャ>
率先して救護活動していただいて、ありがとうございます。
<グレニア>
いやいや、医者として当然のことだよ。
<アーシャ>
ルーファス君、がんばってますね。
<グレニア>
ああ、とっても手際が良くてね、大助かりだよ。
<アーシャ>
それにしても、怪我人、けっこう出てるんですね・・・
<グレニア>
ああ、それだけ中央街道を通る人が多かったんだろう。
護衛が来るのがもう少し遅かったらと思うと、ぞっとするよ。
<グレニア>
アーシャさんも十分に気をつけてね。
<アーシャ>
はい。



中央街道を少し外れたところ


<アーシャ>
うっわ〜、街道なんかじゃ絶対に見かけない魔物が沢山いるね。
<アーシャ>
それじゃ、あなた達は南の方を、私は北の方を探るから。
<ギルドの人達>
わかりやした、あねさん!
<アーシャ>
あーもー、だからなんで、みんな、あねさんって呼ぶのさ〜。
<アーシャ>
まあ、もう、いいや。
とにかくよろしく。






<男>
(おかしい…、これだけの魔物をけしかけているというのに
 結界が消えるどころか、街に煙1つ立たないなんて・・・)
<アーシャ>
見つけた!
あなたが魔物を操ってる犯人だね。
<男>
なっ、なんだ貴様!?
(馬鹿な!? 魔物の行動に不自然さは感じたとしても
 操られていることや、ましてやこの場所がわかるはずが・・・)
<アーシャ>
みんなを傷つけた報い、受けてもらうよ!
<男>
まあいい、丁度、情報が不足してたところなんでね。
魔物でたっぷりといたぶりながら、詰問させてもらうとしよう。


魔物を操る男と戦闘

勝利


<男>
馬鹿な!? こんな小娘ごときに・・・
<アーシャ>
さあ、あなたの代わりに
私がいろいろと詰問させてもらおうかな。
<男>
ふっ・・・
死人に口なしという言葉を知っているかな・・・
<アーシャ>
え? あ、ちょっと、待ちなさい!

ズシャッ!

<男>
がはぁ・・・
<アーシャ>
そんな・・・
<ギルドの人>
あねさ〜ん、どこにいますか〜。
<アーシャ>
あ、お〜い、こっちこっち。



<ギルドの人>
自ら命を絶つとは、恐ろしい連中ですね・・・
<アーシャ>
そうだね。
まあ、とにかく私は、砦の方へ向かうから
後のことは、よろしく。
<ギルドの人>
わかりやした!

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