第8話 その2



裏庭


<グレニア>
う〜む、なるほどねえ。
<グレニア>
子供達の面倒は私が見るから
アーシャさんはルーファスを追ってくれないかい?
<アーシャ>
はい。
<グレニア>
たぶん、ルーファスは大量の気を吸い取った副作用で
異常なまでに興奮状態になっているはずだ。
何をしでかすか分からないから、十分に注意してな。
<アーシャ>
わかりました。
<グレニア>
あと、森の奥の方は危険な魔物が多いから気をつけて。
<アーシャ>
はい、それじゃ、いってきます。






<エリーシア>
こらー!
待ちなさい!!
<ルーファス>
どう、姉さん?
姉さんの足でも追いついてくるのがやっとでしょ?
<エリーシア>
いい加減にしなさい、ルーファス!
お願いだから、元のあなたに戻ってよ…
<ルーファス>
姉さんは、ひ弱で軟弱な
出来損ないのままの僕の方がいいの?
<エリーシア>
私はあなたのことを出来損ないだなんて
思ったことは、一度もないわよ!
<ルーファス>
もう、うんざりなんだよ。誰かに守られて
みじめな思いをするのは!
<ルーファス>
姉さんはいいよね。
家や弟のために健気にがんばる姉として皆に評価されてさ。
ダシにされる方は迷惑なんだよ!
<エリーシア>
そんなの、あなたの思い込みよ!
<ルーファス>
でも、もう、そんなこと、どうでもいいんだ。
この力さえあれば・・・
<ルーファス>
うっ・・・がっ・・・
<エリーシア>
ど、どうしたの、ルーファス
<ルーファス>
そんな・・・力が・・・ぬけて・・・
だめ・・・いやだ・・・
<ルーファス>
そうか、もっとエネルギーが必要なんだ・・・
もっと、もっと吸い取らなきゃ・・・
力を・・・力を!!
<エリーシア>
もう止めて、ルーファス!
お願いだから・・・もう・・・







<アーシャ>
(やっと見つけた!)
<アーシャ>
ちょっと、エリー、大丈夫!?
ねえ、エリーてばぁ!!
<アーシャ>
ルー君、なんてことするの!
<ルーファス>
姉さんがいけないんだよ!
僕の気持ちなんて、ちっとも分かってくれない姉さんが・・・
<ルーファス>
うぅ…あぁ…、駄目だ、まだ・・・まだ足りないんだ・・・
でも・・・
<アーシャ>
(ルー君、とってもつらそう・・・
 とにかく、どうにかしてルー君を止めなきゃ!!)


ルーファスと戦闘

<ルーファス>
まだ、まだ足りない・・・
<アーシャ>
もうやめようよ、ルー君。
ルー君は、ルー君のままでいいんだよ。
<アーシャ>
真面目で素直なルー君。やさしくて思いやりのあるルー君。
グレニアさんの仕事を一所懸命に手伝うルー君。
エリーも私も、そんなルー君が好きなんだよ。
<アーシャ>
力だけが強さじゃないよ。
ルー君は心の中にもっともっと素敵な強さを持ってるはずだよ。
<アーシャ>
お願いだから、
力に振り回されたりなんかしないで!
<ルーファス>
アーシャさん、ごめんなさい。
僕・・・僕・・・


グレニアさんの家


<アーシャ>
どうですか?
みんなの具合は。
<グレニア>
大丈夫だよ。子供達もエリーシアさんもルーファスも
命に別状はないし、2、3日はダルさが残るかもしれなけど
しっかり休めば直ぐに元気になるよ。
<アーシャ>
よかった〜。
一時はどうなることかと思いましたよ。
<グレニア>
ただ、みんな精神的にいろいろと疲れているかもしれないね。
まあ、そこらへんのケアも私の仕事だからね。
心身共に元気になるようにしてみせるさ。
<アーシャ>
よろしくお願いします。
<アーシャ>
それにしても、あの、やさしいルー君が
あんなにも強くなることを求めていたなんて・・・
<グレニア>
う〜ん、それはちょっと違うかな。
<グレニア>
ルーファスはただ強くなりたかったんじゃない。
認めて欲しかっただけなんだよ。
<グレニア>
自分は1人でも大丈夫なんだ。だから心配しないでってね。
病弱でかわいそうな子としてじゃなく
普通の男の子として接して欲しかっただけなんだよ。
<アーシャ>
はあ、そういうものなんですか。
<グレニア>
健康なのが当たり前の人間には、分かりえない心理さ。
エリーシアさんの心配性なところがルーファスには
逆に負担になってしまっていたんだよ。
<グレニア>
でも、まあ、今回の件で互いの意見をぶつけ合って
いろいろと分かり合うことができることを願ってるよ。


グレニアさんの家の診療所


<ルーファス>
う、う〜ん・・・
<エリーシア>
あ、ルーファス、起きた?
<ルーファス>
あ、姉さん・・・
<ルーファス>
あの・・・その・・・
本当にごめんなさい、ぼく、あんな酷い事を・・・
<エリーシア>
いいのよ、ルーファス。たまにはケンカもしなくっちゃ。
<エリーシア>
感情をさらけ出して、ぶつかり合わないと
分からないこともあるものなのね。
<エリーシア>
私の方こそごめんなさい。あなたの気持ちもわからずに
押し付けがましくお姉さんぶってばかりで。
弟ばなれできない、駄目な姉よね。
<ルーファス>
そんなことないよ。
それに、優しい姉さんのことはとっても好きだよ。
ただ、そんなに心配してもらわなくても、僕は平気だから。
<エリーシア>
そうね、あなたに対して失礼だったわね。
一人前の男の子なのにね。
<エリーシア>
グレニアさんも、あなたのことをとっても褒めてたわ。
ルーファスは人の痛みをわけってあげられるやさしい子だって。
勉強熱心だし、ぜひ、一緒に医者の道を進んで欲しいって。
<ルーファス>
そうなんだあ。なんだか、照れちゃうなあ。
<エリーシア>
これからも、そんな素敵なあなたでいてね。
<ルーファス>
うん。

第9話へ

目次に戻る