〜第8話〜

解き放たれた感情



グレニアさんの家の前




 クリスに頼まれて、エリーと一緒に研究の材料を
 ステンシアの森に採りにいった帰りのことでした。


 私達はステンシアに来たついでに
 グレニアさんの家へと寄りました。
<エリーシア>
ごめんください。
<グレニア>
やあ、いらっしゃい。
<アーシャ>
仕事の帰りなんですけど
ちょっと顔を出しておこうと思いまして。
<グレニア>
そうかい。ルーファスは、今まだ学校だけど
そのうち帰ってくるだろうから、
よかったら、ゆっくりしていきなよ。
<エリーシア>
はい、それじゃあ、お邪魔させて頂きます。


リビング


<エリーシア>
いつもルーファスの面倒を見ていただいて
本当にどうもありがとうございます。
<グレニア>
いやいや、とっても真面目でいい子だし
仕事も手伝ってもらっちゃって、こちらとしては大助かりだよ。
<グレニア>
この診療所に来る人たちからの評判も
とってもいいんだよ。
<エリーシア>
それはよかったです。
<アーシャ>
ところでグレニアさん。
ちょっと気になることがあるんですけど・・・
<グレニア>
ん? なんだい?
<アーシャ>
外に植えてある植物のことなんですけど、一区画だけ
何だか元気がないみたいなんですけど、どうしてですかね?
<グレニア>
そうなんだよ。なぜかわからないけど、あそこだけね。
誰かに傷つけられたとか、変な病気が流行ってるってわけでも
ないんだけどねえ。
<アーシャ>
何だか、エネルギーというか、気というか、そういうのを
抜き取られたかのような感じですよね。
<グレニア>
もしかすると、根っこの方に何か問題があるかもしれないねえ。
今度、詳しく調べてみようかな。



<来診者の声>
すみませ〜ん。グレニア先生、いらっしゃいますかー?
<グレニア>
おっと、来診のようだ。
ちょっと席をはずすけれど、気にせずゆっくりしていってね。
<アーシャ>
はい。


その頃、学校では・・・


<女の子>
ルーファス君、また勉強おしえてもらえる?
<ルーファス>
うん、いいよ。
<女の子>
今日の宿題のところなんだけど…
<男子A>
よう、ルーファス、また女子といちゃいちゃしてんのかよ。
<男子B>
ていうか、お前ほんとは女なんじゃねえの?
ヒョロヒョロだしよぉ。
<女の子>
なによ、あんた達、自分がもてないからって
ひがんでんじゃないわよ。みっともない。
<男子C>
あんだと、やんのかこら!
<女の子>
かよわい女の子に暴力ふるう気?
さいってーね!
<男子A>
用があんのは、おめぇじゃねえ。ルーファスの方だ。
てめぇは引っ込んでろ。
<男子B>
というわけだ。ちょっとツラかせよ。
<女の子>
ちょっと、連れ出して何しようってのよ。
そんなことさせるわけないでしょ。
<他の女子>
そうよ、そうよ、あんたたち邪魔よ。
とっとと出ていってよ。
<男子B>
へっ、そうやって女子どもに守ってもらってんのが
お前にゃお似合いだよ。
<男子A>
もういい、いくぞ。
<女の子>
もー、あいつらときたら、まったく・・・
<女の子>
ルーファス君、あんなやつらの言うことなんて
気にすることないからね。
<ルーファス>
大丈夫、気にしてなんかないよ。
<女の子>
それじゃあ、さっきの続きね。
<女の子>
ここの、3問目のところなんだけど・・・




<男子C>
くっそ、あの生意気な女子ども・・・
<男子A>
あいつだけを連れ出す方法は
なんかねーのかよ、お前ら。
<男子B>
こんなんどうっすか?
<男子B>
ごにょごにょ・・・
<男子A>
なるほどな。
よし、さっそく、しかけるぞ。




<女の子>
ルーファス君、どうもありがとう。これで宿題はバッチリだよ。
<ルーファス>
どういたしまして。
<女の子>
それじゃ、帰ろっか。
<ルーファス>
そうだね。それじゃ、荷物とってくるよ。
<ルーファス>
よいしょっと・・・
<ルーファス>
ん? なんだ、この紙切れ。




<紙切れ>
お前が大事にしてる時計と本は預かった。
返して欲しかったら、1人で裏山まで来い。
誰か連れてきたら、時計はぶっ壊すし、本は破くぞ。
<ルーファス>
そんなぁ・・・
<女の子>
ルーファス君、帰る準備できた?
<ルーファス>
あ、ごめん、僕ちょっと用事を思い出したからさ
先に帰っててよ。すぐに追いつくと思うから。
<女の子>
そう?
それじゃ、またあとで。


裏山


<男子A>
よう、良く来たな。
<ルーファス>
さあ、早く本と時計を返してよ。
<男子C>
はっ。
ただで返してもらえるとでも思ってんのかよ。
<ルーファス>
じゃあ、どうしたら返してくれるのさ。
<男子A>
そうだなあ。土下座でもしてもらおうか。
<ルーファス>
なっ…
<男子B>
どうした?
返して欲しくねーのか?
<ルーファス>
・・・・・・
か、返してください・・・
<男子C>
ひゃっはっはっ・・・
こいつ本当にしやがったぜー。
かっこわり〜。
<男子B>
はっはっはっは、だっせーなおめぇ〜
<男子A>
おい、笑うのはそんくらいにしとけ!
<男子B>
へ? いや、でも・・・
<男子A>
こいつがこうして土下座するって事は
そんだけこれらが大切ってことだろ。
<男子A>
ルーファス、顔上げろよ。
<男子A>
ほら、返してやるよ。
<ルーファス>
ほんと?
<男子A>
そんなわけね〜だろ、ば〜か。
<ルーファス>
なっ・・・
<男子C>
ひゃっはっはっ・・・ 「ほんと?」だってよ。
すんごい嬉しそうな顔して「ほんと?」って・・・
やっべ〜、腹いて〜。はっはっは・・・
男子A>
さ〜て、これからどういたぶってやろうかねえ。
<女の子>
(気になって、後をつけてきたら・・・
 大変、ど、ど、どうしよう・・・)
<女の子>
(そうだ! グレニア先生に知らせよう。
 待っててね、ルーファス君)


グレニアさんの家の前


<グレニア>
ルーファス、遅いなあ。
せっかくエリーシアさんとアーシャさんが来てるっていうのに。
<女の子>
グレニアせんせー!
<グレニア>
おや、どうしたんだい?
そんなに慌てて。
<女の子>
大変なの!
ルーファス君が、ルーファス君が・・・
<エリーシア>
何?
ルーファスがどうしたの!?



裏山


<ルーファス>
痛っ・・・
<男子A>
おら、立てよ。
まだまだこれからだぜ。
<男子B>
おいおい、さすがにそろそろ止めとこうぜ。
<男子A>
ん、まあ、そうだな。
<男子A>
それにしても、こんな本の何がそんなに大事かねえ。




ビリッ!

<ルーファス>
あ!
<男子A>
おっと、ボロっちいもんで、ついつい、破いちまったよ。
<ルーファス>
おまえら〜!!!
<男子B>
なんだよ、やろうってのかよ!
<ルーファス>
絶対に許さないからな!!!










<エリーシア>
ルーファス、どこにいるの?
<アーシャ>
あ、あそこ! ルー君、大丈夫?
<アーシャ>
え? なっ!
<男子A>
がぁっ た、たすけ・・・
<男子B>
うぅ・・・
<アーシャ>
(みんな、ぐったりしてる・・・)
<エリーシア>
ルーファス、いったい何があったの?
<ルーファス>
こいつらが悪さばっかりするから
ちょっと懲らしめてやっただけだよ。
<エリーシア>
なっ? 何を言っているの?
<アーシャ>
(外傷は特にない・・・
 でも、みんな衰弱しきってる・・・)
<アーシャ>
あ!?




〜回想〜

<アーシャ>
何だか、エネルギーというか、気というか、そういうのを
抜き取られたかのような感じですよね。




〜回想終わり〜

<アーシャ>
ルー君、もしかして
この子たちのエネルギーを吸い取ったんじゃ・・・
<ルーファス>
さすがアーシャさん、良く分かりましたね。
<エリーシア>
なっ!?
そんな・・・ いったい、どうやってそんなことを?
<ルーファス>
治癒呪文の応用だよ。アーシャさんのくれた本に載ってた
自分のエネルギーや大気中のエネルギーを相手に流し込んで
自然治癒力を大幅に高める呪文・・・その逆をやっただけさ。
<アーシャ>
そんなぁ・・・
<エリーシア>
ルーファス、あなた、なんてことを・・・
<ルーファス>
こいつらが悪いんだよ!
よってたかって僕をいじめようとしてさ。
<ルーファス>
そんなことより、喜んでよ、姉さん。
僕はもう、前みたいに、ひ弱な僕じゃなくなったんだよ。
<ルーファス>
もう誰かに守ってもらわなくても大丈夫なんだよ。
もう、出来損ないの弟の世話なんてしなくて済むんだよ、姉さん。
<エリーシア>
どうしちゃったのよ!? ルーファス!
<ルーファス>
なんだよ、喜んでくれると思ったのに・・・
<ルーファス>
そうか、僕の力がまだ信じられないんだね。
じゃあ、見せてあげるよ、強くなった僕を。
<ルーファス>
そうだなあ。まずは鬼ごっこでもしようか。
ははは・・・
<エリーシア>
ちょっと、ルーファス!
待ちなさい!!
<アーシャ>
あ、エリー、ちょっと・・・
<アーシャ>
(あ〜あ、いっちゃった・・・
 あっちはステンシアの森の奥だね)
<アーシャ>
(さて、どうしよう。この子たちを
 このままにしておくわけにもいかないし)
<グレニア>
おーい、大丈夫かい?
<アーシャ>
あ、グレニアさ〜ん、こっちです。
<グレニア>
いやあ、やっと追いついたよ。
しかし、これはいったい、何があったんだい?
<アーシャ>
実は・・・

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