〜第7話〜

焦燥の中で



森の中の訓練所




 今日はグラノール山のふもとに広がる森に来ています。


 ここは騎士団が良く訓練に利用している場所です。


 ここ数日、新人の団員の訓練が続けられており
 私はその訓練のお手伝いに来ています。


 とは言っても、訓練中に遭難者が出たりといった
 万が一のことが起きたときの人員として待機しているだけで
 訓練自体はほとんど手伝ってはいません。



<2番隊隊長>
それでは、今から森を抜けて、ライナス副隊長が待つ
グラノール山の山頂までいってもらう。
<2番隊隊長>
各自、地図にある各チェックポイント全てで
札を受け取ること。
<2番隊隊長>
制限時間は2時間。
なお、道に迷った場合には不用意に移動しないこと。
<2番隊隊長>
それでは訓練開始!





<新人隊員>
はあ・・・はあ・・・
<アーシャ>
お疲れ様です。
はい、これが、このチェックポイントの札です。
<新人隊員>
はあ・・・、はあ・・・
ど、どうも・・・
<アーシャ>
あとちょっとですよ。がんばって下さいね。
<アーシャ>
(さて、これで全員通過したね。
 私も、ライナス先輩のいる山頂に行こうっと。)


山頂


<ライナス>
15分休憩後、ふもとの小屋まで戻る。
今度は全員一緒に移動するからな。
<ライナス>
なお、帰りは各自ここにあるマキを持っていってもらう。
炊飯時に使用するので濡らさないように注意すること。
<新人隊員たち>
はい。
<アーシャ>
(うわあ、重たそう・・・
 みんな、がんばれ〜)
<男の声>
こりゃまた、地味なことやってんなあ。
<男>
よう、ライナス。あいかわらず、辛気臭い顔してんなあ。
<ライナス>
デュレスタか・・・
何か用か?
<デュレスタ>
ちょっと通りかかっただけさ。
<デュレスタ>
賞金の掛かった魔物がこの山にいるってんで、
俺たち「ダークウルブス」が華麗に退治しに来たわけだ。
<アーシャ>
(ダークウルブス・・・
 ギルドでは、けっこう名の知れたチームだけど
 この人がリーダーのデュレスタさんか・・・)
<デュレスタ>
それにしても、よくもまあ、こんなつまんない訓練を
長々とやり続けてるもんだな。意味あんのかよ。
<ライナス>
我々には我々のやり方がある。
<デュレスタ>
ははは、
お前さあ、ダグラスそっくりになってきやがったな。
<デュレスタ>
まあ、せいぜいがんばりな。
<デュレスタ>
いくぞ、お前ら。
<デュレスタの部下>
はい。
<ライナス>
・・・・
<アーシャ>
(何だか、感じの悪い人たちだなあ)
<ライナス>
そろそろ休憩終了だ。各自、下山の準備。

小屋の一室


<ライナス>
ダグラス隊長、全員無事に下山が完了しました。
<ダグラス>
うむ、ご苦労。
次は設営と食事の準備だな。引き続き、よろしく頼む。
<ライナス>
了解。
<ダグラス>
アーシャ君もご苦労だったね。
<アーシャ>
いえ、そんな大したことは、してないですよ。
<ダグラス>
今日はもう手伝いが必要な訓練はないから
ゆっくりしていくといい。君の分の食事もこちらで作らせるから。
<アーシャ>
すみません、どうもありがとうございます。
<アーシャ>
そういえば、訓練中に山頂でデュレスタさんという人が
ライナス先輩に声をかけてきてたのですが
騎士団に何か関係のある人なんでしょうか?
<ダグラス>
デュレスタがか・・・
<ダグラス>
彼は、ライナスやゴードンと同期で
我が2番隊の隊員だった男だ。
まあ、すぐに辞めてしまったのだがね。
<アーシャ>
そうなんですか。
<ダグラス>
戦いのセンスが飛び抜けて高かったんだが、
いろいろとあってなあ・・・・



回想シーン:城の中


<デュレスタ>
くっそー、毎度毎度、基礎訓練ばっかさせやがって。
剣すら持たせてもらえないってどういうこった!
<同期の新人隊員>
しょうがねえだろ。俺ら、まだ入りたてなんだから。
<デュレスタ>
そんなもん関係ねーよ、俺はとっとと戦果を挙げて
世間に俺のことを知らしめてやりてえんだよ。
<デュレスタ>
だいたい、自分より弱い先輩の命令なんて
聞いてられねぇって〜の!
<レオン>
はっはっは。
今年の新人は元気なのが多いな。
<デュレスタ>
あぁ!?
誰だ、てめぇ。
<同期の新人隊員>
お前、知らないのかよ。
この人が次期1番隊隊長候補っていう…
<デュレスタ>
ああ、てめぇが噂のレオンってやつか。
丁度いい、てめぇ、ちょっと勝負しろや。
<同期の新人隊員>
おい、止めとけって。
<デュレスタ>
てめぇを倒すのが、俺の実力を認めさせんのに
いっちゃん、てっとり早そうなんだよ。
<レオン>
う〜ん、弱いものイジメの趣味はないんだけどなあ。
<デュレスタ>
なんだと、ごらぁ!
<レオン>
けど、禁煙のはずの城内で、タバコなんか吸ってるようなやつには
ちょっとお仕置きが必要だな。
<デュレスタ>
上等だ、このやろう!


何度も挑むが、レオンに軽くあしらわれるデュレスタ。


<デュレスタ>
・・・くそっ、まだだ・・・
勝負はこれかっ・・ら・・・
<同期の新人隊員>
おい、もう止めとけって!
<レオン>
いやあ、正直おどろいたよ。
ゴードンといい、お前といい、今年は豊作だな。
<レオン>
いつでも相手になってやるから、続きはまた今度な。
俺もいろいろと忙しい身でね。
<デュレスタ>
おい、こら、逃げんのかよ!
待てよ! おい! くそっ!!

回想シーン:訓練所


<ダグラス>
なに?
早く実戦訓練をさせろだと?
<デュレスタ>
ああ、こんなことばっか続けてたって、強くなれね〜んだよ。
とっとと戦いの技術を教えてくれよ。
<ダグラス>
馬鹿者!
基礎が出来ていない者に技術など教えても
付け焼き刃になるだけだ。
<ダグラス>
小さな土台に沢山の物を置こうとしても、乗り切らんだろう。
まずは大きな土台をちゃんと作ってだなあ・・・
<デュレスタ>
うるせぇ!
俺の土台が小さいとでも言うのかよ!
<デュレスタ>
もういい。
騎士なんてやってやれっかってんだ!
<ダグラス>
おい、待たんか、こら。
<ダグラス>
まったく、どうしたんだ急に・・・

回想シーン:城の中


<ダグラス>
そうか、そんなことがあったのか・・・
<レオン>
すみません。
少しは真面目に訓練するようにと思ってのことなのですが…
<ダグラス>
何かしら事を起こさんことには
他の新人への示しもつかんし、今回はしょうがないだろう。
<ダグラス>
(だが、彼のようなものにこそ、しっかりと基礎を
 身につけさせてあげたかったのだがな・・・)



回想シーン終わり:小屋の一室


<ダグラス>
若い者が血気盛んになるのはいいことなのだが
あせらずに地盤をしっかりと固めないことには
上手くいかないことというのは多々あるのだがね。
<アーシャ>
人を教育するというのは、いろいろと大変なんですねえ。

コンコン

<ダグラス>
ん? 開いとるよ。
<ライナス>
隊長、山で遭難者が出たもようです。
<ダグラス>
なんだと?
<デュレスタの部下>
すみません、どうか捜索をお願いします。
<アーシャ>
あなたはダークウルブスの・・・

訓練所




 先ほどのダークウルブスの人の話だと
 山に入ったメンバーの人たちが、予定の時間を3時間過ぎても
 誰一人戻ってきてないそうです。


 山に入ったメンバーは全部で5人。
 私達は早速、捜索のために山へと向かいました。
<ダグラス>
ライナスは西側を、アーシャ君は南側を頼む。
私は他の隊員とで残りの場所を探してみる。
各自、魔物に気をつけろよ。
<アーシャ>
はい。

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