〜第3話〜

うごめく闇



グレニアさんの家の前


<アーシャ>
どうも、お世話になりました。
<グレニア>
いやいや、こちらこそ誕生日会に付き合っていただいて。
<アーシャ>
料理とってもおいしかったです。
次回もぜひ誘って下さい。
<ルーファス>
プレゼント、本当にありがとうございました。
大切にします。
<アーシャ>
うん、喜んでもらえて嬉しいよ。
それじゃ、またね、ルー君。
<ルーファス>
はい。
<ルーファス>
あ、あの・・・
<アーシャ>
ん? なぁに?
<ルーファス>
えっと・・・その・・・
<ルーファス>
き、昨日は本当にありがとうございました。
僕も、もっともっとがんばって、いろいろ勉強します。
<アーシャ>
うん、がんばってね、ルー君。
それじゃ、ばいば〜い。

城下町に戻ってきた。


<アーシャ>
(さ、クリスに採ってきた材料を渡しにいかなくちゃ)

魔法研究所


<アーシャ>
やあ、クリス、頼まれてたものを持ってきたよ。
<クリス>
ありがとう、アーシャ。そこのカゴの上に置いといてくれる?
<アーシャ>
はーい。
<アーシャ>
そうそう、ついでにスターアニスの実も採ってきたんだぁ。
確か、エリクシルを作るときに必要だったよね?
<クリス>
あら、ありがとう、助かるわ。
新米の兵士さん何かだと、どれがどの植物か
わからないことが多いのよ。
<アーシャ>
似たような植物がけっこうあるからねえ。
<アーシャ>
それじゃ、これも同じところに置いとくよ。
<クリス>
ええ、本当にありがとうね。
<アーシャ>
どういたしまして。
<アーシャ>
ところで、エリーって今どこにいるか知ってる?
声だけでもかけておこうかと思うんだけど。
<クリス>
う〜ん…今ちょっとそれどころじゃないかもしれないわ。
<アーシャ>
え? 何かあったの?
<クリス>
えーとね・・・
アーシャには教えるけど、このことは他言無用よ。
<アーシャ>
うん、了解
<クリス>
毎年の武道大会で使用されてるトロフィーがあるでしょ。
あの純金製の。
<アーシャ>
うん
<クリス>
実は、それが何者かに盗まれてしまったのよ。
<アーシャ>
えー!? ホントに!?
<クリス>
ちょっとぉ、声が大きいわよ。
<アーシャ>
あはは、ごめんごめん
<アーシャ>
で、それでどうなったの?
<クリス>
……上層部は責任の擦り付けで忙しいみたい。
まるでタチの悪い子どもの論争。
<クリス>
それが大の大人で
それも国の治安を守るべき人たちなんだからタチが悪すぎ。
しかも、この失態を明るみに出したくないみたいで、
<クリス>
騎士団には普段通り業務を進めつつ、
秘密裏に捜査を進めろなんて無理な要求だして、
何様のつもりなんだか
<アーシャ>
普段の業務ですらあんなに忙しいのに、そりゃあ無茶だよ。
<クリス>
事件を公にして大掛かりな捜査をすれば進展もある。
そう感じてレオン隊長が
『事件を公にして国民の協力を得るべきだ』って訴えてるはずだけれど。
<クリス>
相手は隊長格より上の人間たちばかりだから
<アーシャ>
う〜ん、何か手伝うことができればいいんだけど、
外部の人間が手伝えそうな状況じゃないねえ。
<クリス>
あら、そうでもないわよ。
<アーシャ>
へ?
<クリス>
詳しい話は・・・
レオン隊長から直接聞いてもらおうかしら。
会議も終わったみたいだし。
<レオン>
やあ、2人とも。
<アーシャ>
お疲れ様です。
<クリス>
どうでした? 会議の方は。
<レオン>
正直参ったよ、上層部の頭の固さには。
いくら会議を続けても許可は取れそうにないよ。
<クリス>
やはりそうですか。
<レオン>
ま、上が許可を出さないのなら強行するしかない。
例の調査はもう済んでるかい?
<クリス>
はい。こちらの書類にまとめておきました。
<レオン>
ありがとう、助かるよ。
ところで、アーシャ君はもう詳しい話を聞いたのかい?
<アーシャ>
え、あの〜・・・
<クリス>
現在の状況まで話しておきましたが、
計画についてはまだです。
<レオン>
わかった。
アーシャ君。君にも事件の調査で
手伝ってもらいたいことがあるんだけど、協力してもらえるかな?
<アーシャ>
はい、私にできることであれば喜んで。
<レオン>
それじゃあ、2時から街の自警団の集会場で会議があるから
詳しい話はそこで。
<レオン>
できたら、ギルドで信用に足る人間を何人か連れて来て欲しい。
<アーシャ>
はい、わかりました。
<レオン>
それじゃあ、またあとで。
<アーシャ>
はい。


 というわけで、私は自警団の集会場へと向かいました。

自警団の集会場


<レオン>
今回の事件についてですが、残念ながら王国の上層部は
この失態を隠し通そうとしています。
<レオン>
盗まれたトロフィーは他国から贈呈されたものであり
対外関係にも影響を及ぼすというのも理由の1つです。
<レオン>
しかも、王国政府の誰かが権力争いに勝つために
他派の失脚を狙って事件の手引きをした可能性すらあります。
<レオン>
また、王国軍はそんな政府の言いなりとなっているのが
現状であり、盗難を許してしまったという城の警備状況等も
改善すべき問題です。
<レオン>
そんな政府と軍の体制を一掃すべく、私は自警団の皆様と協力して
政府や軍の内情の公開制度や、軍の行っている業務の一部を
自警団やその他機関にも担当してもらう施策等を練って来ました。
<レオン>
今こそ、その施策を実行に移すチャンスだと私は思っています。
そのために、まずは今回の事件の犯人を
自警団や有志の方々の手で捕まえ、その力を証明し、
<レオン>
今まで調査してきた政府と軍の実情も論拠として、
新体制の構築を政府上層部が認めざるを得ない状況を
作ってしまおうと考えています。
<アーシャ>
(さすがレオン隊長。こんな計画を密かに進めてたなんて)
<アーシャ>
(この計画が実現できれば、エリーの負担も減るんだろうなあ)
<レオン>
犯人の手がかりはほとんど掴めてませんが、
純金製のトロフィーをそのまま保管しておくとは考えにくく、
一度溶かしてしまおうとする可能性が高いと思われます。
<レオン>
そこで、金属の加工を行う設備のある場所や
そういった設備を整えることが可能な場所を
手当たり次第探って行こうと考えています。


 とまあ、こんな感じに話し合いが進み、
 私はとある洞窟を調査することになりました。

洞窟の入り口


<男>
つきましたよ、あねさん。
ここが候補にあがってる洞窟です。
<アーシャ>
ちょっとぉ〜、ゼライド。
その「あねさん」っての止めてって言ってるでしょー。
だいたい、ゼライドの方が年上なんだし。
<アーシャ>
でも、道案内どうもありがとね。
チャチャっと調べてくるから、ここで待っててくれる?
<ゼライド>
何言ってんすか。オレもついてきますよ。
<アーシャ>
言っとくけど、魔物が出てきて襲われても助けないよ。
<ゼライド>
大丈夫です。アーシャさんが魔物を倒した後を
コッソリとついてくんで。
<ゼライド>
それに、逃げ足だけは誰にも負けないですから。
<アーシャ>
何でそんな自慢げな顔が出来るんだか・・・
<アーシャ>
ま、とにかく、パパッと調べるよ。
他のとこも回らないといけないし。
<ゼライド>
ですね。
<ゼライド>
そうそう、ここいらの洞窟は鉱物の発掘のために
火薬を使ってたらしいんで、火薬の入った樽が
まだ残ってるかもしれないっす。
<ゼライド>
刺激すると爆発するかもしれないんで
要注意ですよ。
<アーシャ>
了解。
じゃあ、いくよ。

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