〜第1話〜

プレゼントを渡しに



お城の中のとある場所


<アーシャ>
あ、エリー、お疲れさまー。
<エリーシア>
ごめんねアーシャ、呼び出したのに待たせちゃって。
仕事が中々片付かなくて・・・
<アーシャ>
全然問題ないって。
お城の中は見てて飽きないし。
<アーシャ>
ところで、頼みごとって何?
<エリーシア>
実は、もうすぐルーファスの誕生日なの。
毎年この日は会いにいってるんだけど、
今年は外せない仕事があってね。
<エリーシア>
それで、私の代わりにプレゼントを渡してきて欲しいんだけど、
お願いできる?
<アーシャ>
お安い御用だよ、まかせといて。
ルー君、今年で13才だっけ?
<エリーシア>
ええ。
<アーシャ>
もう、そんな歳かぁ。
じゃあ、私も何かプレゼント用意しよっと。
<エリーシア>
ありがとう。きっとルーファスも喜ぶわ。
<エリーシア>
でも、ごめんなさいね。
こんなこと頼んじゃって。
<アーシャ>
困ったときはお互いさまだよ。気にしないで。
<アーシャ>
それに、他でもない王国軍4番隊の副騎士団長様からの
直々のお願いとあらば断るわけには!
<エリーシア>
もう、からかわないでよ。
《深紅の魔法剣士》さん。
<アーシャ>
どうしてそれを!?
<エリーシア>
あら?けっこう有名よ。
<アーシャ>
も〜、恥ずかしいなあ・・・
<アーシャ>
それはさておき、
親友なんだから、気を使わずにドンと任せちゃってよ。
<エリーシア>
そういってくれると助かるわ。
はい、これがルーファスに渡すプレゼント。
<アーシャ>
では確かにお預かりしました〜。
<エリーシア>
それと、誕生日には間に合わないけど
近いうちに必ず逢いに行くからって、伝えておいて。
<アーシャ>
うん。必ず伝えるよ。
<エリーシア>
それじゃ私は仕事に戻らなきゃならないけど、よろしくね。
<アーシャ>
うん。
お仕事頑張ってね。ばいばい。
<アーシャ>
(エリーはいつも忙しそうだねえ。
 体を壊さなきゃいいけど)
<アーシャ>
さて、ルー君への私からのプレゼントは何にしようかな〜。
<アーシャ>
(そうだ、クリスにちょっとお願いしてみよう)

クリスに会いに、魔法研究所へ



<アーシャ>
やあ、クリス、元気?
<クリス>
あら、アーシャ。こんなところに来るなんて珍しいわね。
どうしたの、今日は?
<アーシャ>
えーっとね、魔導書を一つ売ってもらえないかな。
<クリス>
別にいいけど、魔導書の売買は色々と面倒よ。
借りるだけなら手続きとか簡単なんだけど。
<アーシャ>
いや、プレゼントだからね。
<クリス>
プレゼントって・・・もしかすると、相手はルーファス君?
<アーシャ>
うん。良くわかったね。ルー君の誕生日が近いって知ってたの?
<クリス>
それもあるけど、
あなたの知り合いで魔導書なんて貰って喜ぶのは
彼くらいしか、思い当たらないし。
<アーシャ>
なるほど。
<クリス>
それで、どんな本が欲しいの?
<クリス>
とは言っても攻撃的な魔法に関する魔導書のほとんどは
未成年者の閲覧が禁止されているから、
必然、治癒魔法や神聖魔法関連のものになるんだけど。
<アーシャ>
うん。ジャンルはそれでいいよ。
何かオススメのものってある?
<クリス>
そうねえ、ちょっと待ってて。
<クリス>
これなんかどう?
基本治癒魔術百科。
<アーシャ>
ああ、自然治癒力を高めてどうこうとか
気の流れが何とかって奴だね。
いいんじゃないかな。
<クリス>
本当は大学レベルの本なんだけど、
彼なら飽きずに読めるでしょ。
<アーシャ>
で、いくらで譲ってもらえる?
<クリス>
うーん、複写もあるし、そんな高くなくていいんだけど・・・
1,500Gでどう?
<アーシャ>
もう一声
<クリス>
じゃあ、2,000G
<アーシャ>
何で上がるのぉ…
<クリス>
ふふふ、冗談よ。
<クリス>
そうだ、研究部の方で研究に必要な材料が不足してるんだけど
それを採ってきてくれたら、タダで譲ってあげるわよ。
<アーシャ>
ホント!? ありがとう。
で、何を採ってくればいい?
<クリス>
アーシャほどの腕前なら簡単だと思うんだけど・・・
ステンシアの森に生えてる
シアノコの花とバラミンの花を20本ずつお願いできる?
<アーシャ>
わかった、すぐ採ってくるよ。
<クリス>
別に急遽必要ってわけじゃないから
プレゼントを渡しに行くついででいいわよ。
ルーファス君が住んでるとこ、ステンシアでしょ?
<クリス>
本も先に持ってちゃってかまわないから。
<アーシャ>
ホント!? 助かるよ〜。
<クリス>
それじゃ、材料の方、よろしくね。
<アーシャ>
うん、任せといてよ。


 こうして私は、ルー君が住んでいるステンシアへと出発しました。

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