第10話 その2



仮眠室


<アーシャ>
う〜ん・・・
<エリーシア>
アーシャ、気がついた?
<アーシャ>
あ、エリー・・・
あれ? ここは・・・
<エリーシア>
寄宿舎の仮眠室よ。
近くの森で倒れてたのを私が見つけて
ここまで運んできたの。
<アーシャ>
あ! 先輩は!?
ライナス先輩、知らない?
<エリーシア>
やっぱり、あなたが倒れていたのは
ライナス副隊長がらみのことなのね・・・
<エリーシア>
今、レオン隊長が、ライナス副隊長の後を追っているはずよ。
<アーシャ>
へ? レオン隊長が?
<エリーシア>
レオン隊長がこんな書き置きをしていったの。
<アーシャ>
書き置き?



街が見渡せる丘


<アーシャ>
(これが、ライナス先輩の言っていた
 「既に打ってある手」だっていうの?)


 たぶん、書き置きはライナス先輩がレオン隊長の筆跡を真似して
 書いたものなんだと思います。


 書き置きには、ゴードン先輩を殺した犯人がライナス先輩で
 ライナス先輩は逃亡中。 レオン隊長はそれを追いかけにいくのだと、
 書かれていました。


 他には、ライナス先輩のことが許せないから
 何としてでも捕まえるんだとか、なんだとか、


 また、追跡の状況によっては、国をしばらく留守にする可能性もある、
 ということも書かれていました。
<アーシャ>
(先輩は自分勝手ですね。人の自己犠牲は諌めるくせに
 自分は犠牲になってもいいんですか?)
<アーシャ>
(それに・・・、私の気持ちも知らないで・・・)





 結局、ライナス先輩と親しい、ごく一部の人たちにしか
 本当のことは信じてもらえず、証拠も何も用意できず、
 信じてくれた人たちも、真実を他人に語ることはなく


 レオン隊長が不在であることの影響は多少ありましたが、
 今のところは、いつも通りの穏やかな日常が続いています。


 私も、いつも通りに仕事をしています。
 でも、気の持ちようが、だいぶ変わりました。


 自分のできること、やるべきだと感じたことを
 悔いの残らないように精一杯やろうという気持ちが
 ものすごく大きくなったと思います。


 もし、いつかまた、先輩に会えたときには
 胸を張って、力の限り生きていると言えるように・・・




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